Adobe は、クリエイティブツールからデジタルマーケティングのプラットフォームまで、世界中の何百万もの人や企業が使う製品を提供するソフトウェア企業です。従業員は 3 万人近く、事業は数十か国に広がっています。これだけの規模になると、社内システムをつなぎ、データをいつでも使える状態に保つこと自体が日々の運用上の課題になります。その役割を担うのが、同社の連携プラットフォームチームです。
2026 年初頭、Adobe の Integration Platform Lead である Padmakar Pasala 氏とそのチームは、AI エージェントを全社に広げようとする企業ならいずれ必ず向き合う問いに取り組みました。エージェントをつなぐたびに作り直すことなく、信頼できてガバナンスの効いた業務データを使わせるにはどうすればよいか、という問いです。連携プラットフォームチームがこの試験導入で目指したのは、企業システムをつなぎ、ガバナンスを徹底したうえで、AI エージェントがリアルタイムのデータにガードレール付きで安全にアクセスできるプラットフォームをつくることでした。進め方は、まず限られたチームで実証してそのあと拡大していく、というものです。
「あちこちでボットが動いていて、新しいユースケースが出るたびにまた 1 つボットを構築して保守する、という状態でした。これでは持続可能とは言えませんでした。」
Padmakar Pasala
Integration Platform Lead, Adobe
共有データレイヤーで、リアルタイムかつガバナンスの効いたアクセスを実現
Adobe ATSE は長年 CData Drivers を使っており、CData をよく知っていました。データレイヤー構想が実現できるかを調べたところ、CData Connect AI はすべての基準を満たしていました。基準は次のとおりです。
そこでチームは、CData Connect AI 上に試験導入用のデータレイヤーを構築し、企業システムを MCP 互換のツールエンドポイントとして公開しました。AWS Bedrock のエージェントは、このエンドポイントを直接呼び出せます。Connect AI は、つないだシステムごとの違いを吸収して構造化されたツールセットにまとめ、基盤となる API を意識させません。そのため、エージェントはどのデータソースに対しても同じインターフェースで操作できます。
権限の更新や業務ワークフローの実行を担う社内エージェントの SARA は、このレイヤー上で動いています。RPA ボットを介さず、これらのツールを直接呼び出します。
オンプレミスの SAP S/4HANA への接続には、Connect AI の Private Proxy Network を使いました。AWS Bedrock と Adobe のオンプレミス SAP 環境を橋渡しし、社内インフラをパブリックインターネットに公開せずにつなげます。
Connect AI のツールキット機能を使うと、ツールをユースケースごとにまとめられます。範囲を絞った専用のツールキットを用意すれば、各チームは自分たちのワークフローに必要なツールだけを探して呼び出せます。
ロールベースのアクセス制御では、ユースケースごとに、使えるツールとデータソースを決めます。データレイヤーに参加するチームが増えても、導入のスピードを落とさずにアクセスを管理できます。
ユースケースごとにツールの範囲を絞ると、エージェントの精度が上がり、トークンの使い方も効率的になります。ツールのカタログ全体ではなく、絞り込んだツールの中から選んで推論できるためです。
SSO は、どのチームをオンボードするにも必須の条件でした。チームは、ユーザーにアクセスを開放する前に、Adobe の ID プロバイダーを Connect AI に設定しました。これで、すべてのセッションは別の認証情報ではなく、Adobe 自身のシステムで認証されます。
ワークスペースは、セキュリティをもう 1 層加えます。グループ単位でアクセスを設定できるので、プラットフォームに参加するチームが増えても、ガバナンスの仕組みはそのまま対応できます。データソース側のシステムが独自の権限モデルを持っている場合も、Connect AI がその範囲をエージェント側に反映するため、アクセスポリシーを改めて実装し直す必要はありません。

基盤ができてからの拡張は、速く進みました。チームは GitHub(クラウド版と、オンプレミスの GitCorp インスタンス)、Slack、SharePoint、Splunk、Confluence、Jira、Wiki を追加しました。データソースを足すときも、新しい連携プロジェクトは立ち上げず、同じデータレイヤーを広げていきます。どのデータソースも同じ MCP ツールインターフェースで公開されているので、今後何が加わっても、SARA は同じ方法で接続済みのシステムにアクセスできます。
「CData Connect AI を選んだのは、データレイヤーの課題を一気に解決できたからです。すべてを MCP で公開でき、ガバナンスの効いたアクセス、リアルタイム接続、そして必要な範囲に絞ったエージェントを実現できます。その結果、エージェントがより的確に動きます。」
Padmakar Pasala
Integration Platform Lead, Adobe
試験導入が完了し、基盤をもとに拡張へ
この試験導入の目的は、データレイヤーを実際に使う 12 の社内チームを受け入れ、適切なガードレールのもとで、エージェントが業務データに安全にアクセスできると検証することでした。試験導入は、チームの想定より早く完了しました。
現在は、試験導入に参加するエージェントが、SAP、Dynamics 365、GitHub、Slack などのリアルタイムデータを使っています。どのアクセスも、MCP レイヤーが強制するスコープ(スキーマをあらかじめ固定した範囲)の中で行われます。各エージェントが触れるのは、定められた範囲のデータだけです。基盤を共有しているため、新しく参加するチームは、追加の連携作業なしに、接続済みのすべてのシステムを使い始められます。
試験導入の規模でも、データレイヤーの信頼性は欠かせません。12 の社内チームが自分たちのワークフローで参加しているため、データアクセスに不備があれば、プロジェクトが遅れるだけでは済まず、各チームの業務が止まってしまいます。
試験導入を終えたチームは、次のレイヤーの構築に取り組んでいます。開発中のオブザーバビリティレイヤーでは、CData でフェデレーションしたクエリログを使い、エージェントが業務データをどう扱っているかを把握できるようにする予定です。次のマイルストーンは、ガバナンスの効いたアクセスをより多くの企業システムに広げることです。その先には、Adobe が事業と財務の運用で頼りにするシステムをすべて網羅した、MCP ツールの完全なカタログを見据えています。
「試験導入によって、このモデルが実証されました。どのチームもその上に構築できる基盤が、今は手元にあります。毎回ゼロから始める必要はありません。」
Padmakar Pasala
Integration Platform Lead, Adobe
CData Connect AI:AI エージェントのためのデータレイヤー
CData Connect AI を使えば、数百の業務データソースをエージェントから使えるツールエンドポイントにできます。読み取り・書き込みへの対応、オンプレミス接続のための Cloud Gateway、ロールベースのアクセス制御、ワークスペース、ツールを探しやすく整理するツールキットを備えています。本番環境のデータレイヤーに必要なものがひととおり揃っているので、ゼロから構築する必要はありません。