CData Arc Q4 2026 リリースでは、連携処理の中でAI を活用できるようになりました。AI クライアントからArc に指示してコネクタを再実行したり、失敗したメッセージを再送したりできるほか、失敗したトランザクションの内容をワンクリックでわかりやすく説明させたり、ワーカープールの処理を遅くしている原因をArc に特定させたりすることも可能です。
本リリースでは、Arc に組み込まれたMCP(Model Context Protocol)サーバーに操作を実行できるツールを追加し、失敗したトランザクションやワーカープールのパフォーマンスをAI で診断する機能を新たに搭載しました。新しいコネクタとして、ブラウザベースでファイルを交換できるPartner Mailbox、Microsoft Graph をベースにしたMicrosoft 365 Email、ソースファイルのクリーンアップ前に配信完了を確認するFinalize も導入しています。さらに、バッチグループ処理、Azure Key Vault と環境変数に対応した外部シークレットプロバイダー、ワークスペースごとのGit リポジトリを追加したほか、オートメーションの可視性、管理API、コネクタについても幅広い改善を行いました。
MCP サーバーの運用ツールを拡充
Arc に組み込まれたMCP サーバーは、Q3 リリースで登場し、読み取り専用の診断ツールを提供してきました。本リリースからは、構成には手を加えずに、稼働中のシステムに対する操作も実行できるようになりました。MCP 対応クライアントから自然言語で依頼して、コネクタの実行、失敗したメッセージの再送、古いファイルのクリーンアップなどをArc に行わせることができます。操作の主導権は常にユーザーにあります。すべての操作には明示的な確認が必要で、既存のArc の権限の範囲内で実行され、監査ログにも記録されます。
診断機能もさらに強化されました。クライアントからサービスレベルのログを取得できるようになり、たとえばトランザクションが作成される前の段階で発生するSFTP Server の接続エラーも確認できます。また、Arc はメッセージごとにアプリケーションログ、リクエストログ、トランザクション記録を紐付けるようになったため、メッセージが失敗した理由を尋ねれば、一連の経緯を1 つの回答で把握できます。
失敗したトランザクションとワーカープールのAI 診断
これまで、トランザクションが失敗するとArc はエラーを表示するだけで、原因の調査はユーザーに任されていました。本リリースでは、「アクティビティ」、「メッセージ詳細」、コネクタの「トランザクション」タブに表示される失敗したトランザクションに、新たに「エラーを診断」リンクが表示されます。クリックすると、Arc が設定済みのAI プロバイダーに障害の分析を依頼し、原因の説明と対処方法の提案を返します。この処理はクリックしたときにのみ実行され、Arc 側で何かが変更されることはありません。コピーボタンで結果をコピーして、サポートケースにそのまま貼り付けることもできます。
パフォーマンスチューニングのために、診断ログを手作業で読み解く必要はありません。AI プロバイダーを設定すると、「高度な設定」タブの「パフォーマンス設定」に「ワーカープールの分析」が表示されます。管理者がロギングセッションを開始すると、Arc はその時点から指定した期間にわたってワーカープールのログを収集します。過去にさかのぼってログを収集することはできないため、調査したい処理遅延が発生する前に収集を開始しておく必要があります。収集が完了すると、Arc はAI プロバイダーを使ってセッションを分析し、検出事項と推奨事項を提示します。推奨事項はあくまで提案であり、Arc が独自に設定を変更することはありません。過去の分析結果は保存されるため、後から見直すことも可能です。Arc AI の詳細はこちらをご覧ください。
ブラウザベースでファイルを交換できるPartner Mailbox
多くの企業では、SFTP クライアントや自動化されたエンドポイントを運用できない取引パートナーとも、ファイルを送受信する必要があります。
新しいPartner Mailbox コネクタは、専用の認証情報でログインできるブラウザベースのメールボックスを取引パートナーに提供するため、パートナー用にArc のログインアカウントを用意する必要はありません。パートナーごとに、専用のコネクタ、ログイン情報、Web アドレスが割り当てられます。
パートナーには2 つのビューが表示されます。「あなたへのファイル」には、フローでステージングされたファイルがダウンロードボタン付きで一覧表示されます。「あなたの提出物」では、ドラッグ&ドロップまたはファイル選択ダイアログからファイルをアップロードし、送信済みのファイルを確認できます。
フォルダ構成は、ダウンロード用とアップロード用の2 つの独立したサブフォルダツリーとして定義し、ドラッグ&ドロップで編集できます。Arc は各アップロードファイルがどのフォルダに格納されたかをフローに通知するため、フォルダ単位でルーティングを設定できます。これは、Arc が内容からドキュメントの種類を判別できないフラットファイルなど、EDI 以外のデータを扱う際に重要になります。パートナーからアップロードされたファイルは、ほかのメッセージと同様にフローに取り込まれるため、後続の処理で特別な仕組みを構築する必要はありません。
ファイルは、設定した保持期間(デフォルトは7 日間)が経過すると削除されます。保持期間を0 に設定するか、「ダウンロード後に削除する」を選択すると、パートナーがファイルをダウンロードした時点ですぐに削除されます。
Microsoft Graph 経由のMicrosoft 365 Email
共有メールボックスや部署用のメールボックスは、ユーザーごとのOAuth 同意を前提とするSMTP やIMAP では扱いにくいのが実情です。また、これらのプロトコルではOutlook の分類項目をまったく認識できません。
新しいMicrosoft 365 Email コネクタは、Microsoft Graph を通じてメールを送受信します。Azure AD サインインに加え、クライアントシークレットまたは証明書を使ったアプリ専用認証をサポートしています。アプリ専用認証を使えば、ユーザーごとの同意なしに、1 つのコネクタでsupport@ やbilling@ などテナント内の任意のメールボックスにアクセスできます。受信時には、フォルダ、既読状態、重要度、添付ファイル、分類項目を条件にサーバー側でフィルタリングできます。処理後は、メッセージを既読にする、Outlook の分類項目でタグ付けする、フォルダに移動するといった操作をArc で実行できるため、メールを削除せずに処理済みとして管理できます。また、別のユーザーの代理として、または別のユーザーとしてメールを送信することもできます。
既存のEmail Send コネクタとEmail Receive コネクタに変更はありません。Gmail、オンプレミスのExchange、その他のSMTP/IMAP サーバーでは、引き続きこれらのコネクタが適しています。
バッチグループ処理と完了処理の保留
フォルダ内のファイルを個別のメッセージとして処理すると、「すべてのファイルが確実に届いたか」という問いに答えにくくなります。これは、すべてのファイルの配信が完了してからソースファイルを削除したり、トリガーファイルを書き込んだり、通知を1 回だけ送信したりする場合に重要になります。
File コネクタとAmazon S3 コネクタは、送信時の入力としてバッチグループを受け付けるようになりました。Arc はバッチ内の各ファイルを通常どおり送信し、1 つでも失敗した場合はバッチ全体を失敗として扱います。送信済みのファイルはArc が記録しているため、再試行時には中断したところから処理が再開されます。
スクリプトもバッチグループに対応しました。スクリプトやEmail Send のテンプレートでバッチ内のすべてのファイルを処理できるため、メッセージ数を数えなくても、バッチごとに1 通の通知を送信できます。また、Script コネクタでは出力時に新しいバッチを作成することもできます。
ソースファイルのクリーンアップについては、File コネクタに「受信ファイルの完了処理を保留」設定が新たに追加されました。この設定を有効にすると、Arc は受信した各ファイルをフローが完了するまで保留状態にします。フローの最後に配置する新しいFinalize コネクタが配信の成功をFile コネクタに通知し、それを受けてFile コネクタがソースファイルに対して設定済みのクリーンアップ処理を実行します。フローがタイムアウトまたは失敗した場合、ソースファイルはそのまま残り、次回の受信時に再度取り込まれるため、データが失われることはありません。
外部シークレットプロバイダー
多くのセキュリティチームでは、認証情報を一元管理されたシステムで保管することが求められています。これまでArc のVault はシークレットをローカルに保存していたため、Azure Key Vault で認証情報を管理しているチームや、環境変数として認証情報を注入しているチームは、各シークレットをArc にコピーし、その内容を同期し続ける必要がありました。
本リリースで、Arc は外部プロバイダーからシークレットを読み取れるようになりました。ジョブでシークレットが必要になった時点でArc がプロバイダーから値を取得するため、コネクタは常に最新の値を使用でき、外部のVault に追加した項目もインポート作業なしでArc から利用できます。外部プロバイダーはArc からは読み取り専用のため、Vault アイテムの追加・編集はローカルVault でのみ行います。コネクタの設定では、これまでどおりVault から選択してシークレットを参照するため、コネクタ側でシークレットの保存場所を意識する必要はありません。
利用できるプロバイダーは2 種類です。Azure Key Vault プロバイダーは複数のVault に対応しており、「追加およびテスト」で接続をすぐに確認できます。環境変数プロバイダーでは、ワイルドカードパターンを使ってArc が取り込む環境変数と、各変数を暗号化された値(Encrypted)として扱うかどうかを指定します。
すべてのプロバイダーのVault アイテムはVault テーブルに一覧表示され、「プロバイダー」列で取得元を確認できます。プロバイダーの設定はほかの構成とあわせてエクスポート/インポートでき、その際も認証情報は保護されたままです。また、Vault の参照はワークスペース設定や「グローバル設定」ページでも利用できるようになりました。
Azure Key Vault プロバイダーの利用にはEnterprise ライセンスが必要です。環境変数プロバイダーはすべてのエディションでご利用いただけます。
ワークスペースごとのGit リポジトリ
Git ベースの構成管理はv26 で導入され、Q3 リリースではローカルリポジトリに対応しました。本リリースでは、ワークスペースごとに専用のリポジトリを持てるようになり、ワークスペースの「バージョン管理」設定でリモートURL、ブランチ、認証情報を個別に設定できます。それ以外については、引き続きインスタンスのリポジトリがデフォルトとして使用されます。
バージョン管理フッターにはリポジトリリストが表示され、次の操作がどのリポジトリに対して実行されるかを確認できます。コミット、プッシュ、プル、破棄の各操作は、一度に1 つのリポジトリに対して実行されます。「フロー」ページでは、表示中のワークスペースに応じてリストが切り替わり、リポジトリをクリックして対象を切り替えることもできます。「コミット履歴」はリポジトリごとに絞り込めます。
日々のGit 作業もより快適になりました。Git の設定を手動で編集しなくても、UI から既存のリポジトリをローカルからリモートに切り替えられます。「コミット&プッシュ」でプッシュに失敗しても、ディスク上の変更が削除されたり元に戻されたりすることはなくなりました。差分表示では「すべての設定を表示」オプションでコネクタのすべての設定を確認できるようになり、Arc が構成ファイルをインデント付きの形式で保存するようになったため、差分がはるかに読みやすくなっています。
オートメーションとアプリケーションデータベースの可視化
スケジュール実行されるコネクタが、実行されたものの処理対象がなかったのか、そもそも実行されなかったのかがわからないのは、運用上の悩みの種です。各コネクタの「オートメーション」タブには、前回の実行結果と次回の実行予定時刻を示す「オートメーションステータス」カードがリアルタイムで表示されるようになりました。また、「アクティビティ」ページに新設された「オートメーションログ」には、Arc が行うすべてのスケジューリングの判断が記録されます。「ダッシュボード」にはバックオフ中のコネクタを示すカードと自動更新オプションが追加され、誰かがわざわざ確認しに行かなくても問題に気付けるようになりました。
Arc 自身の稼働状況の監視も強化されました。アプリケーションデータベースが、データベースタイプごとにテスト済みの上限を超えると、バナーで警告が表示されます。さらに、SLA のAt Risk および違反のイベントがアプリケーションログに記録されるようになったため、メール通知に頼らず、既存の監視ツールでこれらのイベントを検知できます。
管理API、セキュリティ、管理機能
スクリプトやパイプラインでArc を管理しているチーム向けに、管理API でAPI トークンやクライアントシークレットの再生成を含むユーザー管理が行えるようになりました。また、コネクタ間の接続を維持したまま、コネクタのグループを別のワークスペースに移動することもできます。
監査ログには、コネクタ、ワークスペース、ユーザー、ロールなどで、どの設定が変更されたかが変更前後の値とともに正確に記録されるようになりました。変更管理や内部監査に対応するチームにとって、誰が・何を・いつ変更したかがはるかに明確になります。また、新しい「メッセージディレクトリ」設定により、メッセージデータをArc のほかのアプリケーションデータとは別の場所に保存できるようになりました。
コネクタ、マッピング、ファイル転送
本リリースでは、マッピング機能もさらに高度になりました。データベースコネクタでは、AI アシストマッピングのAI プロンプトをカスタマイズできるようになりました。また、Lookup アクションではEDI データ内の修飾子を基に値を抽出でき、XML Map の条件ではXPath、ヘッダー、変数の値を別のXPath、ヘッダー、変数と比較できます。
取引パートナーとの連携では、メッセージの復号に使用された証明書がロールオーバー証明書だった場合、AS2 コネクタがその証明書でMDN に署名するようになりました。これにより、証明書のロールオーバー時に各コネクタで追加の設定を行う必要がなくなります。また、Trading Partner Management Console(TPMC)で997 または999 を追加すると、機能確認応答のルーティングが自動で有効になります。
アプリケーションコネクタとデータベースコネクタでは、Arc で管理している証明書を使用できるようになりました。共有接続のステータスが共有接続セレクターに直接表示されるようになったほか、Webhook コネクタでは受信したHTTP ヘッダーをメッセージヘッダーに昇格できるようになりました。このほかにも、SFTP、Box、Azure Blob、SOAP、Excel、Arc UI 全般にわたって、数十件の細かな改善と修正を行っています。すべての変更点はリリースノートでご確認いただけます。
アップグレードに関する注意事項
クラシックのアクティビティページ、クラシックのレポートUI、クラシックのフローデザイナーは削除されました。バージョン管理機能は管理者専用となり、管理者以外のユーザーには関連オプションが表示されなくなりました。また、Arc 26.4 ではv26 ドライバーを使用しており、一部のデフォルト設定が変更されています。詳しくはリリースノートをご確認ください。
Q4 2026 リリースの導入について
オンプレミスをご利用のお客様は、ビルドページから最新バージョンをダウンロードできます。Arc Cloud をご利用のお客様は、サポートまでご連絡の上、アップグレードの日程をご予約ください。
本リリースの詳細については、ドキュメントをご確認いただくか、サポートチームまでお問い合わせください。
※本記事は CData US ブログ CData Arc 26.4: MCP Server, AI Diagnostics, Partner Mailbox の翻訳です。