
レポートは、作るのも面倒。でも、動かし続けるのはもっと面倒
「Salesforce のデータで、担当者別のパイプラインが見えるレポートがほしい」
言うのは簡単です。でも実際にやるとなると、腰が重くなります。データを取ってきて、テーブルをつないで、計算式を書いて、グラフを並べる。そして完成したあとには、もっと面倒なことが待っています。
そのレポート、誰の PC で更新するのでしょうか。
作った人が休んだ日に止まるダッシュボード。「最新にしておいて」と頼まれるたびに開くノート PC。心当たりのある方は少なくないと思います。
この記事では、CData Connect AI と AI エージェント(今回は Claude Code)を組み合わせて、この2つの面倒をまとめて手放せるか試した結果を解説します。やったことは3つだけです。
AI にデータの中身を見せる — どんな列があって、どんな値が入っているかを先に確認させる
日本語で注文する — 「担当者別のパイプラインが見たい」と伝えるとレポートが出てくる
クラウドに置いて PC を閉じる — 以降は自分のマシンを起動しなくても最新になる

レポートを作るときだけ Power BI Desktop を使い、公開したあとの更新はクラウドだけで完結します
出来上がったのが、こちらです。

日本語の指示だけで生成されたレポート(掲載用にダミーデータで再現)。KPI カード、月次推移、構成比、ステージ別、担当者別が一度に出てきます
用意するものは3つ
用意するもの | 役割 |
|---|
CData Connect AI | SaaS への接続を担当します。無償トライアルあり |
Power BI Desktop | 出来上がったレポートを開いて確認します(Windows・無料) |
AI エージェント | 今回は Claude Code。Cursor などでも考え方は同じです |
かかった時間は、接続の設定が数分、レポートの生成が十数分でした。
準備が必要なのは、最初の一度きりです。AI エージェントのセットアップを一度通してしまえば、あとはずっと日本語で話しかけるだけになります。公式の手順どおりに進めれば迷いませんし、社内のエンジニアに聞けば5分で終わります。
ステップ1:AI にデータの中身を見せる
いきなり「レポートを作って」と言ってはいけません。先に、データの中身を見せます。
CData Connect AI で SaaS への接続を作っておくと、AI がそのデータを直接調べられるようになります。テーブルの一覧、列の名前、そしてその列に実際どんな値が入っているかまで、AI 自身が確認できます。

SaaS ごとに接続を1つ作っておきます。認証の設定は、ここで一度きりです
この一手間が、あとの手戻りを消します。
試しに「商談テーブルにはどんな列がある?」と聞いてみたところ、担当者名や取引先の区分が商談の行に直接入っていることが分かりました。別のテーブルとつなぐ必要がありません。設計が一段シンプルになります。
逆に、名前は立派なのに中身がほとんど入っていない列が見つかることもあります。気づかずに使うと、グラフはそれらしく描画されるのに、中身は「(空白)」だらけ。しかも気づくのは、たいてい人に見せた後です。
AI に作らせる前に、AI に見せる。 これが一番効きます。
ちなみに、この確認に SQL を書く必要はありません。
商談のステージって、どんな値が入ってる?
これで十分です。AI が裏側で問い合わせを組み立てて、実際に使われている値を一覧で返してくれます。聞きたいことを、日本語で聞くだけです。
裏側では、こんな問い合わせが実行されています。
SELECT [StageName], COUNT(*) AS 件数
FROM [Salesforce-JP-Prod].[Salesforce].[Opportunity]
GROUP BY [StageName]
注目していただきたいのは、接続名の部分です。 上の [Salesforce-JP-Prod] を差し替えるだけで、Jira でも Office 365 でも同じように扱えます。
SaaS ごとに API の仕様を調べ、認証を通し、レスポンスの形に合わせて……という作業が、まるごと不要になります。SQL を書く方には「調べる手間が消える」、書かない方には「日本語のまま聞ける」というわけです。
ステップ2:日本語でレポートを注文する
中身が分かったら、あとは注文するだけです。実際に打ち込んだのは、こんな文章です。
Salesforce の商談データでレポートを作って。まずテーブルと列の中身を確認して、値がほとんど入っていない列は使わないで。担当者別のパイプラインと月次推移、勝率が見たい。
これで出てきたのが、冒頭の画面です。中身はこうなっていました。
グラフを16個並べる。色を揃える。計算式の名前を統一する。こうした退屈な作業が、まるごと消えます。
なぜ AI がレポートを書けるのか
Power BI には、レポートの中身をテキストファイルとして保存する形式(PBIP)があります。設定を有効にすると、レポートが「読めて書けるファイル」になるため、AI が直接編集できます。画面をクリックさせる必要はありません。
ステップ3:クラウドに置いて、PC を閉じる
ここが、今回いちばん確かめたかったところです。
出来上がったレポートを Power BI Service(クラウド側)に発行します。CData Connect AI は Microsoft の認定コネクタなので、社内に追加のソフトを立てる必要がありません。

「すべてのデータ ソースがクラウド上にあるため、ゲートウェイは必要ありません」と表示されます
あとは、更新する時刻を決めるだけです。

1日に何回、何時に更新するかを選びます。Power BI Pro なら1日8回まで設定できます
これで、レポートを作った PC は電源を落としていて構いません。 実際に検証では、Windows マシンを閉じたまま、Mac のブラウザから最新の数字を見ています。「最新にしておいて」と頼まれることが、なくなります。
ひとつだけ罠があります。更新時刻の初期設定は UTC(世界標準時)です。 気づかずに 8:00 と入れると、実際に動くのは日本時間の17時。先に「(UTC+09:00) 大阪、札幌、東京」へ変更してください。
また、指定した時刻ちょうどには走りません。仕様上、最大1時間ほど遅れます。朝会で使うなら、少し早めの枠を取っておくと安心です。
予算は Excel、実績は Salesforce のとき
もうひとつ、よくある場面に触れておきます。予実です。
実績は Salesforce にあり、予算は Excel で管理されている。この2つを並べたいだけなのに、Salesforce の標準レポートでは結合できません。レポートが対象にできるのは Salesforce 上のデータだけだからです。
予算を専用のオブジェクトとして作り込む手もありますが、毎月のインポート運用がついて回ります。年度が変わって粒度を見直すたびに、設計から手を入れることにもなります。
BI 側で混ぜてしまえば、Salesforce の設定は一切変えずに済みます。今回のレポートも、Salesforce の実績と Excel の予算を並べて達成率を出しています。
ひとつだけコツがあります。Excel は SharePoint や OneDrive の URL で参照してください。 自分の PC 上のパスを指定すると、そのファイルのためだけに社内へ追加のソフトを立てることになり、せっかくの「PC を閉じられる」構成が崩れます。
AI が決めてくれないこと
やってみて、人間に残る仕事もはっきりしました。「どの日付で月を区切るか」「その割合の分母は何か」といった、数字の定義です。
実際に、やらかしました。売上を月別に集計するとき、商談が成立した日で区切っていたのですが、正しくは請求した日でした。レポートは完璧に動いていて、数字だけが違っていたのです。エラーも警告も出ません。いちばんたちの悪い壊れ方です。
AI はレポートを作れますが、何を正しいとするかは決めてくれません。裏を返せば、そこさえ決まっていれば、あとは任せられます。この工程が人間の手に残るのは、むしろ健全だと思います。
まとめ
作る前に、AI にデータの中身を見せる。 どんな列があるかを先に知るための、いちばん安い保険です
日本語で注文すればレポートが出てくる。 グラフを並べる作業は消えます
公開したあとは、自分の PC が要らない。 社内に追加のソフトを立てる必要もありません
数字の定義だけは人間が決める。 ここは任せません
BI の「作る」と「動かし続ける」を、どちらも手放せます。
CData Connect AI には無償トライアルがあります。いきなりレポートを作らなくて構いません。まずは接続を1つ作って、AI に「このデータ、何が入ってる?」と聞いてみるところからで十分です。それだけでも、手元の SaaS の解像度がはっきり上がります。
→ CData Connect AI の無償トライアルを始める
付録:実際に手を動かす方の詰まりどころ
レポートのファイルは UTF-8(BOM なし) で保存します。BOM 付きだと Power BI Desktop が開けません
テーブル定義を書き換えたら、Desktop 上で手動の「更新」が必要です。F5 では走りません
日付の一覧(カレンダーテーブル)は、扱う日付をすべて覆う範囲にします。足りないとグラフに (空白) が出ます
予算表などの Excel を混ぜるときは、SharePoint の URL で参照します。ローカル PC のパスを指すと、そこだけのために追加のソフトが必要になります
生成したファイルは、Power BI Desktop で開く前にテキストとして機械的に検査しておくと早いです。存在しない列を参照していてもエラーは出ず、グラフが静かに空白になるだけなので