
はじめに
iPaaS(アイパース)とは、複数のクラウドサービスや社内システムをクラウド上で連携させるための基盤サービスです。
「そろそろiPaaSを検討したい」というご相談をいただくことがあります。ただ、実際にお話を伺っていくと、思い描いている中身が人によって驚くほど違うと感じることが少なくありません。ワークフロー自動化ツールをイメージされている方もいれば、クラウド版のETLツールを指している方、あるいはAPI連携基盤全体をまとめてiPaaSと呼んでいる方もいらっしゃいます。
この記事では、iPaaSという言葉が指す範囲を整理しながら、仕組み・種類・よく比較されるRPAやAPI、ETLとの違い、そして導入前に確認しておきたい限界までを、できるだけ中立的な立場でまとめました。目次は以下の通りですので、気になる項目から読み進めていただければと思います。
iPaaSとは(Integration Platform as a Service)
正式名称と読み方
iPaaSは、Integration Platform as a Service(インテグレーション・プラットフォーム・アズ・ア・サービス)の略称で、「アイパース」と読みます。SaaS(Software as a Service)やPaaS(Platform as a Service)と同じ「as a Service」の系列にある言葉で、システム連携の機能そのものをクラウドサービスとして提供する、という意味が込められています。
Gartner 社はiPaaSを「企業内、あるいは複数の企業をまたいだオンプレミスおよびクラウドのプロセス・サービス・アプリケーション・データを接続する、連携フローの開発・実行・管理を可能にする一連のクラウドサービス」と定義しています。少し硬い表現に感じるかもしれませんが、要するに「クラウド上に用意された、複数のシステムをつなぐための共通基盤」と捉えていただければ十分だと思います。
なぜ必要になったのか
iPaaSが注目されるようになった背景には、企業が利用するSaaSの数が急増したという事情があります。かつては基幹システムを中心に、少数のシステムをオンプレミスの連携基盤でつなぐのが一般的でした。しかし現在では、営業はSalesforce、経理は会計クラウド、人事はSaaS型の勤怠管理システムというように、部門ごとに異なるSaaSを利用するのが当たり前になっています。
部門ごとに最適なSaaSを選んだ結果ではあるものの、全社で見ると顧客情報や案件情報がシステムごとに分断されてしまい、「どの案件が今どの段階にあるのか」を横断的に把握することが難しくなってしまうわけです。
こうした状況でデータ活用を進めようとすると、利用しているAI・BIツールから各システムへのAPI連携を構築していくことになります。しかしシステムごとに個別のAPI連携を作り込む方法では、開発と保守の負荷がどんどん膨らんでしまいます。API仕様が変わるたびに連携コードを修正する必要がありますし、つなぐシステムの組み合わせが増えるほど、管理すべき連携の数は掛け算的に増えていきます。
iPaaSは、こうした個別連携の積み重ねを避け、クラウド上の共通基盤で連携をまとめて管理できるようにする発想から生まれたサービスです。そして部門最適の積み重ねによって生まれるサイロ化を、後付けで解消するための現実的な選択肢でもあるわけです。
「データ連携基盤」との関係
日本語では、iPaaSは「データ連携基盤」や「クラウド統合プラットフォーム」と呼ばれることもあります。厳密には、データ連携基盤という言葉はiPaaSよりも広い概念で、後述するETLツールやEAIツールなど、システム間でデータをやり取りする仕組み全般を指すこともあります。iPaaSはそのデータ連携基盤を実現する方法のひとつであり、特に「クラウドサービスとして提供され、ノーコードに近い操作でワークフローを組める」という特徴を持つものと考えると整理しやすいでしょう。
iPaaSに関連する用語の整理
iPaaSは、RPAやAPI連携、ETL、EAI、ESB、あるいはPaaS・SaaS・IaaSといった言葉と混同されがちです。まずは表で全体像を整理してみます。
用語 | 何をするものか | 主に動く場所 | 得意なこと | 苦手なこと |
|---|
iPaaS | クラウド上でシステム間の連携ワークフローを構築・実行する | クラウド | SaaS同士の連携、ノーコードでのワークフロー構築 | 大量データの一括処理、複雑な変換ロジック |
RPA | 人が行うPC操作(クリックや入力)を記録して自動実行する | PC・仮想デスクトップ | APIが用意されていない画面操作の自動化 | システム構成の変更に弱く、API連携には不向き |
API連携 | システムが公開する仕様に沿って個別にプログラムで接続する | アプリケーション内 | 特定の1対1連携を柔軟かつ高速に実装できる | 連携先が増えるほど開発・保守コストが増大する |
ETL / ELT | 複数のデータソースからデータを抽出し、変換してDWHなどへ格納する | クラウド/オンプレミス | 大量データのバッチ処理、分析基盤へのデータ集約 | リアルタイムな業務プロセスの自動化 |
EAI | 企業内の複数システムをリアルタイムに近い形で連携させる | オンプレミス/クラウド | 複雑な分岐・変換を含む基幹連携 | 導入・運用コストが高くなりやすい |
ESB | バスを介して各システムやサービスに疎結合でアクセスする | オンプレミス/クラウド | SOA型のシステム間連携、EDIなどのメッセージング処理 | 設計・構築に専門知識が必要 |
PaaS・SaaS・IaaS | アプリケーション実行基盤・完成済みソフトウェア・インフラをクラウドで提供する | クラウド | 開発基盤やソフトウェアそのものの提供 | システム間の連携機能自体は主目的ではない |
なお、表にあるEAI・ESBは、iPaaSが登場する以前から企業内システムの連携を担ってきた仕組みです。両者とEDI(電子データ交換)の関係については、この記事では深掘りしませんが、B2B領域のファイル転送やEDIを中心に検討されている場合は、汎用的なiPaaSではなく、B2B連携に特化した専用製品のほうが適していることもあります。
また、実際の製品を見ていくと、ひとつのサービスが複数の性質を併せ持っていることも珍しくありません。たとえば、もともとレシピ型として登場したサービスが、徐々に複雑な分岐処理やAPI開発機能を取り込み、EAI寄りの機能を備えていくといった進化も見られます。用語の境界線にこだわりすぎず、「自社がやりたいことに対して、そのサービスがどこまで対応できるか」という視点で見ていただくのがよいと思います。
iPaaSとRPAの違い
RPAは、人がキーボードやマウスで行っている操作をそのまま記録し、繰り返し実行するためのツールです。API連携が用意されていない古い業務システムや、画面操作でしか完結しない作業を自動化したいときに強みを発揮します。
一方でiPaaSは、システム同士をAPI経由で直接つなぐことを前提としています。そのため、画面操作の自動化ではなく、データそのものをシステム間でやり取りする用途に向いています。「画面を自動操作したいのか」「システム間でデータを連携させたいのか」で、選ぶべきツールは変わってくるでしょう。たとえば、基幹システムに新規APIが用意されていない場合はRPAで代替入力を自動化しつつ、周辺のSaaS間連携はiPaaSで組む、というように役割を分担して併用されるケースもあります。
iPaaSとAPIの違い
API連携は、つなぎたいシステムの数だけ個別に開発する方法です。1対1の連携であれば、柔軟性が高く、細かい要件にも対応しやすいという利点があります。ただし、連携先が5社、10社と増えていくと、それぞれの認証方式やエラー処理を個別に実装・保守する必要が出てきて、開発チームの負荷はどんどん重くなっていきます。
iPaaSは、こうした個別開発の積み重ねをあらかじめ用意されたコネクタとノーコードのワークフロー機能で肩代わりする仕組みだと考えると分かりやすいと思います。既存のコネクタでカバーできる範囲であれば開発コストを大きく抑えられますが、逆に非常に特殊な連携や、コネクタが存在しないシステムが相手の場合は、結局API連携を自前で組む必要が出てくることもあります。
実務ではコネクタが用意されている主要な連携はiPaaSにまかせ、コネクタが存在しない自社独自のシステムとの連携だけをAPIで個別に開発する、というハイブリッドな構成もよく見られます。
iPaaSとPaaS・SaaS・IaaSの違い
PaaS・SaaS・IaaSは、いずれも「何をクラウドで提供するか」という切り口の分類です。IaaSはサーバーやネットワークといったインフラそのもの、PaaSはアプリケーションを開発・実行するための基盤、SaaSは完成済みのソフトウェア機能を提供します。
これに対してiPaaSは、「複数のクラウドサービスやシステムをつなぐこと」に特化したサービスです。極端に言えば、SaaSを含むさまざまなクラウドサービスの間を橋渡しする役割を担うのがiPaaSであり、他の3つと並列というよりも、それらを組み合わせて使う企業にとって必要になってくる、もうひとつのレイヤーだとイメージしていただくとよいでしょう。たとえば、SaaSで営業支援システムを利用しながらIaaS上に自社システムを構築し、その両者をiPaaSでつなぐ、という組み合わせは決して珍しくありません。
iPaaSとETLの違い
ETLは、複数のデータソースからデータを抽出し、分析しやすい形に変換したうえで、データウェアハウス(DWH)やデータレイクへ格納するための仕組みです。大量データをバッチでまとめて処理することを得意としており、BIツールでの分析やレポーティングの土台として使われることが多くなっています。
iPaaSも「複数のシステムからデータを取得して連携させる」という点ではETLと似ていますが、主眼は分析基盤へのデータ集約ではなく、業務プロセスそのものの自動化にあります。たとえば「新規リードが登録されたらSlackに通知し、CRMにも自動登録する」といった、リアルタイム性の高い業務フローの実行はiPaaSが得意とする領域です。どちらか一方を選ぶというよりも、業務プロセスの自動化にはiPaaSを、分析基盤の構築にはETLを、というように目的に応じて使い分けている企業も多く見られます。ETLとの違いをさらに詳しく知りたい方は、ETLとは何かを解説した記事もあわせてご覧いただくと理解が深まると思います。
iPaaSの主な機能
提供するベンダーによって細かな違いはありますが、一般的なiPaaSには次のような機能が共通して備わっています。
コネクタ/API連携:主要なSaaSやクラウドサービスに対して、あらかじめ用意された接続部品(コネクタ)を通じてつなぐことができます。独自のAPI仕様を一から実装する手間を省けるのが大きな特徴です。
データ変換・マッピング:連携元と連携先でデータ項目の名称や形式が異なっていても、画面上でマッピングを設定するだけでデータの形を揃えられます。
ワークフロー・オーケストレーション:「Aが起きたらBを実行し、条件を満たせばCへ分岐する」といった一連の処理の流れを、ノーコードに近い操作で組み立てられます。
監視・エラーハンドリング:連携処理が失敗した際にアラートを出したり、リトライを自動で行ったりする仕組みが用意されており、連携が止まっていることに気づかないという事態を防ぎやすくなります。
認証とアクセス制御:各システムへの接続情報やアクセス権限を、iPaaS側で一元的に管理できます。誰がどの連携にアクセスできるかをコントロールしやすくなる点も、業務で使ううえでは重要なポイントです。
連携テンプレート:よくある連携パターンがテンプレートとして用意されている製品も多く、ゼロからワークフローを組まなくても、テンプレートを少し変更するだけで運用を始められる場合があります。
これらの機能がどの程度充実しているかは製品によって差があるため、検討段階では、自社が実際に使いたいSaaSに対応したコネクタが用意されているか、監視やエラー通知の仕組みが自社の運用体制に合っているかを具体的に確認しておくことが大切です。
iPaaSの種類(4分類)
iPaaSとひとくくりに呼ばれるサービスも、中心となる機能によっていくつかのタイプに分けて考えることができます。ここでは代表的な4つの分類を、ごく簡単にご紹介します。それぞれの機能はどんどん強化されているため、必ずしも明確に線引きできるわけではありませんが、大まかな見取り図として参考にしていただければと思います。

レシピ型:ZapierやIFTTT、国内であればYoomのように、あらかじめ用意された定型の処理をイベントドリブンで実行するタイプです。専門知識がなくても直感的に使え、メールやタスク管理、カレンダーといった定型連携に向いています。なお「レシピ」はこの分類を説明するための呼び方で、サービス側の名称はZapierなら「Zap」、IFTTTなら「アプレット」のように異なります。
クラウドETL・ELT型:データレイクやデータウェアハウスへ大量のデータをローディングすることに主眼を置いたタイプです。分析基盤へのデータ集約を目的とする点が特徴です。
クラウドEAI型:InformaticaやHULFT Squareのように、レコードに対する分岐処理や細かなマッピングなど多様かつ高機能な処理に対応するタイプです。ほぼすべての連携ニーズに応えられる分、価格は他のタイプより高くなる傾向があります。
クラウドESB型:SOA(サービス指向アーキテクチャ)を実現するための仕組みで、バスを介して各サービスに疎結合でアクセスします。EDIなどのメッセージング処理を分散型で効率的に扱える点が特徴です。
自社の用途がどの分類に近いのかを考えることで、数多くあるiPaaS製品の中から検討対象を絞り込みやすくなると思います。それぞれの分類についてさらに詳しく知りたい方は、iPaaSの分類を解説した記事もご覧ください。
iPaaSはどう動くのか(仕組み)
iPaaSの基本的な仕組みは、大きく4つのステップで説明できます。

トリガー:「レコードが追加された」「一定時間が経過した」など、連携処理を開始するきっかけとなる出来事を検知します。
データ取得:コネクタを通じて、連携元のシステムからデータを取得します。
変換・加工:取得したデータを、あらかじめ設定したマッピングやロジックに沿って加工します。項目名の変換や、条件による分岐処理などがここで行われます。
連携先への反映:加工済みのデータを、連携先のシステムへ書き込んだり、通知を送ったりします。
これらの一連の流れは、多くのiPaaS製品においてノーコードもしくはローコードの画面上で設定できるようになっています。エンジニアでなくても、業務担当者自身がワークフローを組み立てられることが多いのも、iPaaSが広く使われるようになった理由のひとつだと思います。
たとえば、「CRMに新しい商談が登録されたら、経理システムに見積情報を自動登録し、担当営業へチャットツールで通知する」というワークフローを考えてみます。この場合、トリガーは商談登録、データ取得はCRMからの商談情報の取得、変換・加工は経理システムの項目形式への変換、連携先への反映は経理システムへの登録とチャット通知の送信、という4つのステップにそのまま対応します。仕組みとしてはシンプルですが、業務でよくある「入力の二度手間」を解消できる典型的な例だと思います。
iPaaSでできること(ユースケース)
ここまで機能や仕組みを説明してきましたが、実際の業務でどのように活用されているのかをイメージできないと、自社への導入効果は判断しづらいと思います。ここでは、iPaaSがどのような場面で活躍するのか、具体的なユースケースをいくつかご紹介します。
営業・マーケティング連携:特定の条件に合致した見込み客をMAツールで検知し、CRMへ自動登録したり、該当するマーケティングキャンペーンに自動で追加したりする使い方です。
ECと在庫管理の連携:ECサイトで注文が入ると、在庫管理システムの在庫数を自動で更新し、常に正確な在庫数を保つといった使い方ができます。
カスタマーサポートとCRMの連携:問い合わせフォームから届いたサポートチケットの内容を、CRM上の顧客レコードへ自動的に反映させ、サポート担当者が必要な情報にすぐアクセスできるようにします。
社内通知・承認フローの自動化:特定の申請が登録されたら、承認者へチャットツールで通知を送り、承認結果に応じて後続システムのステータスを更新する、といった業務フローの自動化にも使われます。
請求書・経費データの連携:経費精算システムで承認された経費データを会計システムへ自動的に反映させ、二重入力の手間や転記ミスを減らす使い方です。
人事システムとアカウント管理の連携:人事システムに入社日が登録されたタイミングで各種SaaSのアカウントを自動的に発行し、逆に退職処理が行われた際にはアカウントを無効化する、といった使い方もあります。
iPaaS導入のメリット
iPaaSを導入することで得られるメリットは、主に次の5つに整理できます。
ワークフローの自動化と工数削減:手作業で行っていた繰り返し作業を自動化することで、担当者はより付加価値の高い業務に時間を使えるようになります。
データ統合による意思決定の質の向上:複数のアプリケーションに散らばっていたデータを一貫した形で連携させることで、データのサイロ化を防ぎ、経営判断に必要な全体像を把握しやすくなります。
可視性の向上:どこにどのようなデータがあり、どう連携しているかを一元的に把握できるようになるため、業務全体の見通しがよくなります。
運用効率化とコスト削減:専任の連携エンジニアを必要とする自前開発と比べ、契約してすぐに使い始められるため、立ち上げまでの時間とコストを抑えやすくなります。専任エンジニアを新たに採用・育成するには相応の時間がかかりますが、iPaaSであれば契約後すぐに設定を始められるため、立ち上げまでのリードタイムを大きく短縮できるでしょう。
拡張性・柔軟性:あらかじめ用意されたコネクタやテンプレートを活用することで、連携先の追加やデータ量の増加にも比較的スムーズに対応できます。事業の成長にあわせて連携先が増えていっても、都度ゼロから設計し直す必要がなく、既存のワークフローに手を加える形で対応できる点も安心材料になると思います。
iPaaSの限界と、導入前に確認すべきこと
ここまでiPaaSの機能やメリットを見てきましたが、実際に導入を検討する際には、あわせて確認しておきたい限界もあります。この章では、その中でも特につまずきやすい4つのポイントを取り上げます。

事前に設計したワークフローの外側は動かない
iPaaSのワークフローは、基本的に「トリガー」と「その後の処理」をあらかじめ設計しておく必要があります。想定していなかったパターンのデータや、設計時には存在しなかった例外的なケースが発生した場合、ワークフローはエラーで止まるか、意図しない形でデータを処理してしまう可能性があります。つまり、業務の変化に合わせてワークフローを継続的に見直し、メンテナンスし続ける前提で運用する必要があるということです。
たとえば、あるキャンペーンでは特定の商品カテゴリのみを対象にワークフローを設計していたところ、後から新しい商品カテゴリが追加され、そのカテゴリのデータだけがワークフローの対象外となって連携から漏れてしまう、というトラブルも起こり得ます。設計時点では想定していなかった例外は、運用を開始してからしか発見できないことが多いという点も、あらかじめ理解しておく必要があるでしょう。
接続先のスキーマが変わったときに何が起きるか
連携元や連携先のシステムで、項目が追加・削除されたり、データ型が変更されたりすることは珍しくありません。こうしたスキーマの変更が起きたとき、あらかじめ設定していたマッピングがそのまま使えなくなり、連携が失敗したり、一部の項目だけが欠落したまま反映されてしまったりすることがあります。しかも、こうした不整合はエラーとして明確に表面化するとは限らず、後から「なぜかデータが一部だけ抜けている」という形で気づくケースも見られます。
特に、連携先が自社でコントロールできない外部SaaSである場合、ベンダー側の仕様変更のタイミングを事前に把握することが難しく、ある日突然マッピングが崩れてしまうということも起こり得ます。導入前には、接続先のスキーマ変更が起きた場合にどのような挙動になるのか、通知の仕組みも含めて確認しておくとともに、定期的にワークフローの実行結果を確認する運用体制もあわせて検討しておくとよいでしょう。
権限とガバナンスが連携ツール側に分散する
複数のiPaaSやRPA、個別のAPI連携を並行して使っていると、それぞれのツールごとに接続情報やアクセス権限の管理が発生します。誰がどのシステムに、どのような権限で接続しているのかを横断的に把握することが難しくなり、気づかないうちに退職者のアカウント情報が残っていた、といったガバナンス上のリスクにもつながりかねません。連携ツールが増えるほど、この管理の負荷は大きくなっていく傾向があります。
特に複数の部門がそれぞれ別のiPaaSやツールを個別に契約している場合、全社的にどの連携がどこで動いているのかを情報システム部門が把握しきれていない、というケースも見受けられます。導入時には、どの部門が何のためにどのシステムへアクセスしているかを一覧化し、定期的に棚卸しする運用ルールをあわせて整えておくことをおすすめします。
従量課金と実行回数の関係
多くのiPaaSは、ワークフローの実行回数やデータ処理量に応じた従量課金の仕組みを採用しています。連携する業務が増えたり、扱うデータ量が増えたりすると、想定していたよりもコストが膨らんでしまうことがあります。
特に大量データを頻繁にやり取りする用途では、契約前に料金体系を十分に確認し、将来的な利用拡大も見据えたシミュレーションをしておくことが望ましいでしょう。また、実行回数に応じた課金体系の場合、テスト目的で頻繁にワークフローを実行していると、想定外にコストが積み上がってしまうこともあります。本番運用前の検証段階でどれくらいの実行回数が発生するのかも、あわせて見積もっておくと安心です。
iPaaSの選び方(チェックリスト)
数多くのiPaaS製品の中から自社に合うものを選ぶときは、製品ごとの機能を比べる前に、自社側の前提を確かめておくと判断しやすくなります。次の5つの観点について、当てはまるものにチェックを入れてみてください。
① 連携対象:つなぎたいシステムに届くか
□ いま使っている主要なSaaSやシステムのコネクタが、標準で用意されていますか
□ 将来つなぎたい基幹システムやオンプレミスのデータベースも、対応範囲に入っていますか
□ コネクタがない場合の代替手段(汎用APIコネクタ、個別開発)を確認できていますか
② 作る人と直す人:社内の誰が担当するか
□ 業務担当者だけで組めるのはどこまでか、線引きを把握できていますか
□ エンジニアの手が必要になる場面(複雑な変換処理、例外時のリカバリ)を洗い出せていますか
□ 作った担当者が異動しても、別の担当者が引き継げる状態になりますか
③ コスト:利用量が増えても耐えられるか
④ 運用:失敗に気づける仕組みがあるか
⑤ 前提:そもそもiPaaSが最適な手段か(見落とされがちな観点)
チェックの付かない項目が残ったなら、そこが導入後につまずきやすい箇所です。とくに⑤にチェックが付かないときは、製品を絞り込む前に「そもそもどの方式が自社の目的に合うのか」を整理し直したほうが、結果的に近道になると思います。
大量データの分析基盤づくりが目的であればETLやデータ仮想化、複雑な基幹連携が中心であればEAIというように、目的によって最適な選択肢は変わってきます。データ基盤全体の選定で迷われている方は、ETL・データ統合・データ仮想化の違いを整理した記事もあわせてご確認いただくと、判断材料が増えるかと思います。
①〜④については、資料やWebサイトだけでは判断しきれない部分も多いはずです。デモや無料トライアルを活用しながら、自社の実際のユースケースに近い形で動作を確認してみることをおすすめします。
AI時代にiPaaSをどう位置づけるか
ここまでご紹介してきたiPaaSは、いずれも「あらかじめ設計されたワークフロー」を前提とした仕組みです。トリガーとなる出来事や処理の分岐を事前に設計し、その範囲の中で自動化を実現するという発想は、業務プロセスの自動化においてこれからも重要であり続けるでしょう。
とはいえ、これは「iPaaSが不要になる」という話ではありません。定型的な業務プロセスの自動化においては、これからもiPaaSが最適な選択肢であり続ける場面は多いはずです。一方で、AIエージェントが状況に応じて自律的にデータへアクセスする場面では、あらかじめ用意されたワークフローの枠を超えた、より柔軟な接続の仕組みが求められるようになってきています。
生成AIやAIエージェントが自らデータを参照しながら判断・実行する場面が増えるにつれて、少し違うタイプの連携ニーズも生まれてきています。AIエージェントは、あらかじめ用意されたワークフローの中だけで動くというよりも、そのときどきの状況に応じて「どのデータが必要か」を自ら判断し、必要なシステムへ都度アクセスすることが求められます。
こうした場面では、MCP(Model Context Protocol)やSQLのような標準化されたインターフェースを介して、AIエージェントが多様なデータソースへ横断的にアクセスできる仕組みが重要になってきます。CDataでは、こうしたAIエージェント時代のデータ接続のあり方を「Universal Connectivity」という考え方として整理しています。詳しくは、AIエージェント時代のiPaaSとUniversal Connectivityについて解説した記事をご覧ください。
「従来型のiPaaSで組んでいる自動化ワークフローと、AIエージェントによるデータアクセスは、それぞれどう使い分ければよいのか」「自社のデータ基盤は、AIエージェントからの問い合わせにどこまで対応できているのか」といった観点で整理を進めたい方に向けて、CDataではiPaaSとAI時代のデータ接続を比較したコンテンツをご用意しています。気になる方は、ぜひiPaaSとAIエージェント時代のデータ接続の比較ページをご覧いただければと思います。
まとめ
iPaaSは、複数のクラウドサービスや社内システムを、クラウド上でノーコードに近い形で連携させるための基盤サービスです。RPAやAPI連携、ETL、EAI、ESBといった似た用語とは、それぞれ得意とする領域が異なっており、自社が実現したいことに応じて適切な選択肢は変わってきます。
導入によって、ワークフローの自動化や意思決定の質の向上といったメリットが期待できます。一方で、事前設計の範囲を超えた変化への対応や、スキーマ変更時の挙動、権限管理の分散、従量課金の設計といった点は、導入前に必ず確認しておきたいポイントです。
AIエージェントがデータへ自らアクセスする場面が増えていく中では、iPaaSがカバーする範囲と、それ以外に必要となる仕組みを合わせて考えることが、これからのデータ連携基盤づくりで欠かせない視点になっていきます。iPaaSを検討する際は、目の前の連携ニーズだけでなく、将来的にAIエージェントを含めたデータ活用がどう広がっていくかまで視野に入れて、基盤選定を進めていただくとよいでしょう。
iPaaSの先にあるデータ接続
iPaaSは想定済みのワークフローの外では動けません。CData Connect AIなら、AIエージェントが必要なデータへMCP経由でアクセスできます。
Connect AIの無料トライアルで、AIエージェント時代のデータ接続をぜひ体験してみてください。
出典・参考情報
本記事は、以下の情報をもとに整理しています。
iPaaSの先にあるデータ接続
iPaaSは想定済みのワークフローの外では動けません。CData Connect AIなら、AIエージェントが必要なデータへMCP経由で都度アクセスできます。
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